あいつのキスの練習台

 ――その時、あたしの中の何かが崩れ落ちた。

 上から下へと真っ逆さまに、そして音も立てずに。


「はぁっ、はぁっ」


 誰に見られても構わない。

 あたしは泣きながら家へと走った。


 腕や足が取れちゃうんじゃないかってくらいに全速力で。

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