あいつのキスの練習台

 涙を流しながら、きょとんとするあたしの顔を見て、達也は笑っている。


「なんで!? 昨日っ、キス……見たのに……最低……」


「あー、あぁ。うん」


 バツが悪そうに頬を掻く達也を見て、もっと涙が溢れ出てきた。


「あれね、別れ切り出したらキレられてね。一回もキスしなかったくせに! とか言ってきてさ」


 あたしの頬を伝う涙を優しく撫でながら達也は続ける。

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