レッスンを始めてから半年が過ぎた頃の週末、僕は偶然街でエミリーを見つけた。

そこで僕は心臓を剣で突かれたようなショックを受けた。

エミリーが男と仲良く手を繋いで歩いていたのだ。

しかも彼女の服装は、僕と会っているときとは違い綺麗に着飾られ、顔にはきっちりと化粧が施されていたのが離れていても確認できた。

僕はエミリーと今まで様々な話をしてきたが、恋愛の話だけはあえて避けてきた。

それはエミリーに恋人がいることがわかるのが怖かったからだ。

僕はエミリーには恋人がいないと勝手に決めつけていた。

実際彼女もそんな素振りはまったく見せなかった。


しかし現実は違ったのだ。
 
エミリーには恋人がいる。

その事実を僕はきちんと受け入れることができなかった。

僕はエミリーと恋人同士になりたいとは思っていなかったつもりだったが、心のどこかではそれを望んでいたのかもしれない。

ああいう光景を見てしまうと、悔しさが止めどなく込み上げた。
 

次の水曜日、僕はエミリーの部屋を訪れたがまだ気持ちの整理はついていなかった。



< 8 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop