揺らぐ幻影

他人を不快にさせがちな頬杖をついて、ぼんやりとクラスメートを見渡した。

女子十五人、男子十六人のうち、恋人が居るのは女子六人で男子九人。

どうして同い年なのに恋愛偏差値に差が生まれるのだろうか。

カップルの人たちは毎日どんな風に一日を始めて明日を控えるのだろうか。

さっぱり分からない。
交際相手が居る人が勝ち組に思えてならないのは何故。

誰かに説明してほしい。さっさとオカタイ言葉が並んだ黒板を消し、ハートマークを用い熱弁してほしい。

恋愛の授業があるなら、総合学習並に真剣に取り組めるのにと結衣は思った。


  クラス公認カップル

  、皆に茶化されたりしたいな

  親と仲良くなったり

  ほら、近藤くん家でご飯ごちそうとか……

  んー……お揃いの何か欲しい

甘い妄想をしつつ、ふと我に返る。


服飾コースは女子二十七人に男子は五人足らずで逆ハーレム状態。

美人な子やスタイルの良い子、メイクが上手な子や卒業したらオーディションを受ける子、

……選りすぐりの可愛い子ちゃんら二十七人と毎日同じ教室で過ごしているため、

必然的に彼は女を見る目があるだろう。


  ……毎日女子に囲まれてさ

  目、肥えるよね、

  最悪かも

  だってあれだよ

  理想レベル上がるじゃん……?


自分なんか中の中、いや中の下……、下の上かもしれない。

冷静になれば、仮に同じクラスでも気安く接近出来ない気がした。

なぜなら結衣はこんな風にうじうじするだけで 何も出来ないでいるから、

きっと同じクラスになっても見ているだけなのだろう。


授業中にお喋りなんて不可能だろうし、仲良しグループになることも無理だろうし、

もしもの話で勝手に自己嫌悪をし、落ち込んだり切なくなったり、

片思いのおおよそ半分は痛い成分で占めている。

そして もう半分は痛いくらいの勘違い。

恋をすると、そのように極端な二面性を上手く操縦していかなければいけないことを結衣が知るのは、まだまだ先のこと――……


と、含みを持たせて、ラブハプニングに欠けるこの単調な物語を進めよう。

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