揺らぐ幻影
作戦を振り返ると、今まで結衣は愛美とペアになることが多かった。
無意識にいつもショートカットの生徒を選んでいた。
結衣が最初に頼るのは愛美で、愛美が最初に頼るのは里緒菜で、
里緒菜が一番信頼しているのが愛美だったら?
精神的な意味で余り者は自分じゃないか。
里緒菜が羨ましかった。
いざという時に頼りにされる彼女が羨ましかった。
ううん、本当は少しだけ妬ましいと思ってしまった。
狡いと、結衣だって愛美を理解したいのに、里緒菜が一番知っているから悔しかった。
仲良しだと思っていた。
問題ないと思っていた。
愛美、里緒菜、結衣。
オンナノコにありがちな溝は三人に限ってなかった。
自分たちは低レベルな皆と違って、大人だから他者を蔑まないし楽しいことだけを選ぶ愉快な仲間たちだと自信があった。
というのも、一般的に女子はグループ内であれこれ小規模な問題を作りたがる生き物で、
E組でも一人ハミゴにされたり、他のグループに移籍したりする子が居た。
どこの学校にもあるイザコザ。
そんな風に仲間割れするクラスメートたちを、嘆かわしいと結衣は見下してきた。
だって、第三者からすればどれもくだらない理由ばかりなのだ。
そのため、『トラブルがお好きなことで』『いい年して子供みたい』と、
一歩引いてプププと内心嘲笑っていた。
馬鹿だなぁと思った。
そう、結衣が馬鹿だなぁと思った。
結衣は里緒菜の女友達失格だと思う。
結衣は愛美の女友達失格だと思う。
凄く凄く凄く嫌な女だ。
意地悪をしてハミゴを作るクラスメートよりも悪質な女だ。
だって、きっと、彼女は、精神的な面で里緒菜を仲間ハズレにしていた。
誰よりも陰険な女は田上結衣だ。
仲良しだと思っていた?
問題あるのは彼女じゃないか。
嫌いになった、嫌いになっても結局自分は自分なのだから、自分を嫌えなかった。
この田上結衣を作り上げた昨日までの自分が疎ましかった。
性格ブスは居るんだと知った二月十五日のこと。
バレンタインらしい甘い香りが逆に切ないし、性格ブスには可憐なお花が似合わない。