揺らぐ幻影


『私は恋愛って凄いなと思いました。』


作文のような一行が頭に浮かんだ。




近藤洋平を好きになってから田上結衣は微妙にパワーアップした。


山瀬愛美、小崎里緒菜。
里緒菜<愛美ではなく、
里緒菜=愛美だ。
生温い友情を叱ってくれたのは恋だ。



市井雅。
噂や人の目を気にしたらいけないと無言で注意してくれたのは彼で、

頑張って隣に立つ大切さを知ったのは恋だ。



奥。
自信を付けてくれたのは彼女で、見た目の磨き方を教えてくれたのは恋だ。



大塚。
人に好かれる感覚を与えてくれたのは彼で、鈍い奴は人を傷付けると学んだのは恋だ。



静香。
嫉妬は負けだと悟らせたのは彼女で、努力をしないと性格ブスになるという格言を体感したのは恋だ。



田上千依。
冷静にさせてくれたのは彼女で、自分と社会との関わりの大切さを痛感したのは恋だ。



バレンタインからホワイトデーにかけて、多分まあまあ成長した。

だから、きっと、好きになってもらえた。


結衣は近藤が好き。

マシュマロをくれた近藤が好き。


キラキラしている人。

欲張りだから、傍だと駄目で、
ずっとずっと隣に居たい。



『私は嬉しかったです』




本当は、背が高い。

近藤の背は普通に高い方だ。

イケメンたちは百八十センチあって当たり前みたいな風潮があるけれど、

実際、結衣の周りで見ると、ほとんどの男子は百六十九センチくらいで、

全国平均の身長の女子からすれば、彼らを特別見上げるとかはなかった。


百七十五以上なんて学年に十人ちょっとくらい、――マドカ高校では、それが基準なので他の学校もそれが日常だと思っていた。


少しだけある差、
それが愛おしい。

本当は近藤の身長はマドカ高校の一年の中だと高いとされる。


恋は、ひいき目。
好きになったから好き。



『皆が居るから、彼女になれました。』

これから先、そんな人生でありたい。

サボり魔な結衣は誰かに世話をみてもらって、近藤と永遠に出会ってみたい。

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