揺らぐ幻影
「あれだよね、ご飯とかさ、どうするどうするなんでもいいよー……で終わりそ大塚」
優柔不断は嫌だと里緒菜が主張する。
小崎里緒菜は愛美よりは背が低く、結衣と愛美と三人並べば携帯電話の電波みたいだとよく言われる。
――――と、お察しの通り、友人についての紹介を再び連ねるが、
端的に言えば仲良しということなので、重要度の低いプロフィール情報は続く。
重めのボブ髪は、肩までつくのでもはやボブとは呼べないが、
少し前ブームに乗ったのがバレバレで恥ずかしいから伸ばしているらしいけれど、
結衣からすれば愛美同様に彼女はオシャレっ子だ。
メイクはとにかく目元重視で、マスカラにアイラインにアイシャドーとガッツリ濃いけれど、
パッツン前髪のお陰で、キツさはそれなり抑えられているように思う。
これまた愛美同様、明る過ぎるカラーはイマイチな為、
黒髪とまではいかないが比較的暗めなピンクベージュに染めた髪はお人形さんのように艶があり、
いつも毛先まで栄養が行き届いている。
三人はそっくりな性格なのか、里緒菜も深夜バラエティー番組を見た翌日ネタにして笑う明るい子で、
爆笑ポイントが似ている価値観のせいか、入学式以来やはり仲良しさんだ。
私服は愛美と趣味が合うらしく、夏休みに見たオールインワンが凄く似合っていた。
クラスではやはり『オシャレだね』だと言われる注目度の高いポジションだ。
彼女たちは一見派手めだが、世間で言われるがっつりなギャルではない。
街中で遊ぶけれど深夜未明まで他校とつるむ訳ではなく、バイトはするけれど居酒屋ではなくコンビニやパン屋やファミレス止まり、
髪は染めるしお化粧はするけれど頭髪検査の日は黒スプレーにすっぴんで登校する。
もちろんピアスの穴にはコンシーラを塗る。
女子高生らしい流行りな感じ、と言うのが妥当だろうか。
派手な子とも地味な子とも仲が良い、みたいな立場で、
だからといって、イケてないのに勘違いして調子に乗る中途半端グループではなく、
ギャルの次に華があるグループで、つまり中間中堅なようだ。
三人娘はとにかくファッションと恋とアルバイトが命、勉強は微妙といった雰囲気の群れだ。