揺らぐ幻影
普段は無頓着なのに、調子の良い時は神や仏に頼ってしまうもので、
例外なく片思いにおまじないや魔法を他力本願に信じたがる結衣は、
最近の神様は味方かもしれないと、勝手に感謝していた。
なぜなら、不自然にならない最適な場所、ドアのすぐそばでお昼ご飯を食べている近藤が居たのだ。
これはチャンスでしかない。
てか、何
なんか、すご、
意中の彼はさておき、まず結衣は別世界に驚いた。
同じ面積で日当たりだってたいして差のない教室なのに、
F組に入った瞬間の雰囲気は、E組とは全く違う。
それは壁にかけられた手描きのセンスが良いポスターのせいか、姿はないが机に並べられたマニキュア瓶の美しさのせいか、
あるいは卓上加湿器を可愛くデコレーションしてあるせいか、もしくは彼女たちの香水の残り香のせいか――
すっご、
普通にオシャレな教室
後ろの黒板にデザイン性のある文字で、クラスメートの名前を落書きしてあるからかもしれないし、
教卓にプリクラをペタペタ貼ってあるからかもしれないし、
蛍光灯の周りにシャンデリアのように、輝くビーズの紐を張り巡らせてあるせいかもしれない。
とにかく毎日が文化祭のような賑やかで華やかな差別化されたここは、
街中が似合うオシャレガールたちが暮らすにはぴったりだった。
らしさが溢れていて、服コの存在感がある不思議は、
自分たちを引き立てる演出が分かっているとしか思えない。
そう、結衣には馴染まなくて、頑張ってます感がダサさを漂わせてしまうだろう。
なんだか気後れしてしまい場違いな気がし、萎縮しそうになるけれど、
いつも逃げてばかりだと、正解の道が分からなくなって迷子になってしまうはずだ。
用があるんだって!
そう、近藤くん
微妙にカルチャーショックを受けていた結衣は、のんびりと我に返った。
頑張ろう、
今日の目的をしっかり頭に叩き込む。