天国の武に告ぐ
その日は暑い夏だった、武は水泳部に所属していた。美紀は美術部だった・・・・・
「暑い、こんな夏の日はアイスクリームが食べたい」「そうだね暑いからねアイスクリーム食べたいね」「うん」ぼちぼち美紀は歩きながら友達の巴と話していた。
プールに差し掛かったとき誰かが勢いよくプールに飛び込むのが見えた、武だった。「彼将来有望視されてる水泳選手だよ」「へえ」水しぶきを上げて勢いよく飛び込んだ、きれいな手の曲線が弧を描くようにクロールで泳ぐ武の姿が見えた・・・よくここから彼の泳ぎ見てた。「へえファンなんだ彼の?」「ファンてほどでもないよ」「ふうん」「彼泳ぎ上手でしょ?」「うんきれいなフォームしてるね」「うんきれい」美紀は体が弱くてスポーツとか駄目だもんね。「うん駄目」「ここから彼の姿見てるだけでいいんだ」「ふうん」「純情可憐な子だよね君は」「ふふっ」遠くからずっと彼を眺めていた・・・見ていても全然飽きなかった。きれいなフォーム・・・からだの弱い美紀にはそれがとても新鮮に見えた。いつもは美術部で絵の具だらけになってたけどこの部活が始まる数時間の間は違っていた。いつもここから見ていた・・・・・・・・・・・・
「声かけてみたら?」「うんできない」「なんか照れがあってさ」「うん」「怖くて声がかけられない」「そっか、それじゃあいつまでたっても片思いのままだよ」「うん」「でもいいんだ」「ここで彼が見られるだけで」「そっか」
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