天国の武に告ぐ

いつもこの時間になると校庭で彼の姿をみていた・・・夕方遅くなるまで。美術部の窓から彼が泳ぐ姿が見えた・・・それはとてもまぶしくてきれいだった。
「美紀いっそのこと水泳部はいるとか？」「水泳部？」「無理だよ体弱いもん」「でも体弱くても水泳部はいるの大丈夫じゃない？」「無理だよ私には」「そうか」「みてるだけでいいの？」「見てるだけでいいんだ」「そっか」「うん」「私声かけてあげようか？」「いいよそんなん、こっちから遠くで見てるだけでいいんだから」「そっか」「うん見てるだけでいいなんて・・・饅頭も食べられなきゃただの絵に描いたもちなのに」「何それ饅頭って」「だから見てるだけじゃ遠くからじゃ話したり付き合ったりしないとわからないってことだよ」「うん」「声かけてあげるよ」「いいよそんなん」「彼に悪いし・・」「彼だって水泳の泳ぎのファンがいたら喜ぶよ・・・」「そうかな」「うん国体だってそうしたら応援に行けるんだよ」「うんそうしたいけど」「かけてあげるよ声」「待って待って・・・・・・・」「うん待ってもう少し見ていたいんだ」「そっか見てるだけでいいの？」「うん見てるだけでいいから」「なんか時間もったいなくないじれったいな」「いいの見てるだけで」そんな調子で美紀の一日は過ぎていく。「もう少し美紀が体強かったら違ってたのにね」「うん体弱いからな」「巴にも面倒かけちゃってごめんね」「いいよ別にもう慣れたし・・」「慣れたってひどいな」