一なる騎士
「そんなに人間がか弱い生き物だとは思うのか。精霊使いがいれば、精霊をある程度は制御できる。自然の脅威にだって対処方法はあるだろう。何も知らなかった原初の時代とは違うんだ。大地の剣と王と騎士、もう時代遅れなんだよ」

 リュイスの抗議をひとつひとつエイクは封じていく。
 あいからわずのらりくらりとした態度で。
 リュイスの苛立ちは増すばかりだった。

「あなたは、女神の御業を非難されるのかっ!」

 ついに発したリュイスの怒号を、エイクはまったく取り合わなかった。

「そんなにいきり立つな。単なる思考実験だよ」

「思考実験?」

 なじみのない言葉にリュイスの怒りがそがれる。

「もしも、こうだったらどうなるのか、理論的に考えることだ。僕だって伊達にエルウェルにいたわけではない。しかし、君には刺激が強すぎたかな、『一なる騎士』殿。僕とても、王が大地を支配し、騎士が支える構図を疑ったことなどなかった。君の父上に出会うまではね」

「私の父……」

 いきなり出された名にリュイスは戸惑う。
 なぜ、そこに父が出てくるのだ?


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