一なる騎士
(9)クレイドル
厚めの茶色の上衣に黒のズボン。肩から無造作に背嚢を下げ、あきらかに旅装とわかる姿で年若い精霊使いの長がそこにいた。
赤茶の髪が、薄闇に沈んで今は茶色にしか見えない。
あかるい青い瞳をなんの屈託もなく彼らに向け、歩み寄ってくる彼にリュイスとエイクはどちらからともなく立ち上がって迎えた。
「クレイドル?」
いずれセイファータに来ることは聞いていたが、なんという間合いで現れたものか。
また、よくもここがわかったものだ。
いや、彼は仮にも精霊使いの長。
リュイスの居場所を把握することなど、いとも簡単なことだろう。
「お久しぶりです。リュイス。エイク殿は、しばらく見ないうちに、目に痛い度がさらに上昇したようですね」
クレイドルの遠慮のない言葉に、エイクは片眉を吊り上げてみせた。
「かわいい顔をして相変わらず口が悪いなあ、長殿は」
たしかに男にしては可愛らしげで実年齢よりは幼く見える精霊使いの長は、エイクの揶揄の言葉に動じなかった。
ふわりと笑うと軽くいなす。
「先輩にはかないませんよ」
「そんなことより、今の話は本当だと言うのか」
ふたりの話をさえぎって、リュイスが問う。
クレイドルはエイクを先輩などと呼び、妙に親しげな二人のそぶりは気にはなったが、今のリュイスにそれどころではない。
エイクの聞き捨てならない言葉を精霊使いの長である青年はあっさりと肯定してのけたのだ。
「ええ」
はたして、クレイドルはリュイスにうなずき返した。
「貴方の父上はたしかにエルウェルに在籍されていたことがあります。当時の論文は表向き破棄されたことになっていましたが、実は先代が保管していました。それを見たのでしょう。ただし」
青い瞳が意外なほどの鋭さでエイクをにらむ。
「『大地の剣』を破壊しろなどと、どこにも書かれてはいなかったはずですね」
赤茶の髪が、薄闇に沈んで今は茶色にしか見えない。
あかるい青い瞳をなんの屈託もなく彼らに向け、歩み寄ってくる彼にリュイスとエイクはどちらからともなく立ち上がって迎えた。
「クレイドル?」
いずれセイファータに来ることは聞いていたが、なんという間合いで現れたものか。
また、よくもここがわかったものだ。
いや、彼は仮にも精霊使いの長。
リュイスの居場所を把握することなど、いとも簡単なことだろう。
「お久しぶりです。リュイス。エイク殿は、しばらく見ないうちに、目に痛い度がさらに上昇したようですね」
クレイドルの遠慮のない言葉に、エイクは片眉を吊り上げてみせた。
「かわいい顔をして相変わらず口が悪いなあ、長殿は」
たしかに男にしては可愛らしげで実年齢よりは幼く見える精霊使いの長は、エイクの揶揄の言葉に動じなかった。
ふわりと笑うと軽くいなす。
「先輩にはかないませんよ」
「そんなことより、今の話は本当だと言うのか」
ふたりの話をさえぎって、リュイスが問う。
クレイドルはエイクを先輩などと呼び、妙に親しげな二人のそぶりは気にはなったが、今のリュイスにそれどころではない。
エイクの聞き捨てならない言葉を精霊使いの長である青年はあっさりと肯定してのけたのだ。
「ええ」
はたして、クレイドルはリュイスにうなずき返した。
「貴方の父上はたしかにエルウェルに在籍されていたことがあります。当時の論文は表向き破棄されたことになっていましたが、実は先代が保管していました。それを見たのでしょう。ただし」
青い瞳が意外なほどの鋭さでエイクをにらむ。
「『大地の剣』を破壊しろなどと、どこにも書かれてはいなかったはずですね」