一なる騎士
「おお、リュイス殿。馬鹿息子が迷惑をかけたようだ」

 彼らに気づいたとたんにあっさりと表情を変えた公爵に、リュイスは内心驚く。この豹変ぶりは確かに親子だ。

「いえ、お蔭様でいい気分転換でしたよ。ところで、こちらは精霊使いの長クレイドル殿です。遠乗りの途中で合流しました」

 リュイスの紹介にクレイドルが進み出て、かるく頭を下げる。

「お初にお目にかかります。私はクレイドル・エレメーン。若輩ながらも精霊使いの長を勤めさせていただいております。この度は、『一なる騎士』の神聖軍に参加したく有志を率いて参上しました」

「おお、それはそれは。して他の精霊使いの方々は」

「ご城下に分泊しております。公爵様にご面倒をおかけするわけには参りませんから」

「そのような遠慮は無用であったのに。我がセイファータはいまや真の志を持つものには、広く門戸を開いているのですぞ」

「しかしながら、これよりさらに神聖なる『騎士』軍に参戦する者たちが集まりましょう。残念ですが、我ら精霊使いは『王』に対しては無力の身ですゆえ」

 ふわりと微笑む精霊使いの長に、公爵は不快げに眉をひそめた。彼は精霊使いたちの勢力を把握したかったのだ。城内に自身の雇った精霊使いをおいているくらいだ。彼は精霊使いの力を過小評価してはいない。むしろ彼らの力を知っているからこそ警戒もしていた。


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