一なる騎士
「リュイス、お二方はともにもう亡くなっています。故人の意志は誰にも窺い知れない。貴方が思い悩んでみても仕方がないことです」

「そうだな」

 リュイスは亡き両親への疑惑を吹っ切るように頭を一つ振った。今はそんなことより考えなくてはならないことがあった。

「ひとつ聞きたいことがある。『大地の剣』とは、だいたい破壊できるものなのか」

「まさか、リュイス」

 さすがに息をのむクレイドル。

「誤解するな。エイク殿にあれこれ言われたからと言って、女神より下された神剣をどうにかしようなどど思うわけがないだろう」

「それを聞いて安心しました」

「で、実際どうなんだ?」

「僕はあの剣を直接に見たことがないのですが、エルウェルには多くの文献が残されています。『大地の剣』に冠された名、『ルイアス』、あれもまた数多ある女神の名一つだと言われています。つまり『大地の剣』は女神ご自身でもあるわけです。剣であって剣でない。この世のものであってこの世のものではない。ただの人間の手によってどうこうできるものではないでしょう。ただ……」

 クレイドルは言い淀んだ。
 さすがに当事者の片方に面と向かって言えることではなかった。

 精霊の干渉を受けつけない『一なる騎士』。そして大地の<気>を制御することによって、精霊を従える『王』。ただの人間と言うにはあまりにも人間離れしている、などとは。

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