一なる騎士
「ただ、なんだ?」

 しかし、答えを待つリュイスは言い逃れを許してはくれない。
 クレイドルはためらいつつも口を開いた。

「こう言っては何ですが、大地の審判者である『一なる騎士』、そして聖別された王がただの人間と言っていいものかどうか、僕にもわからない」

 リュイスは人間ではないと面と向かって言われたも同然だったが、まったく気にならなかった。そんなことよりもずっと気になることがあった。

「それは王が剣を破壊することが可能だということか」

「しかし、王を王と足らしめるのが、『大地の剣』でもある。それをいくら乱心しているとはいえ、壊したり……」

 はっとクレイドルは口をつぐみ、改めてたずねる。

「しかねないと?」

「わからない。しかし」

(「『大地』は、いまだ私の手の中にある」)

 最後の会見のときの王の言葉が、脳裏に鮮明によみがえる。
 あれはどれほどの決意を乗せた言葉だったのだろうか。
 かの王は何をするつもりなのだろうか。

 どのみち、一筋縄ではいかない。
 そうは思っていた。








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