一なる騎士
 ちらちらとアディリの顔色を窺う。
 昨夜のことが気になって気になって仕方がなかった。

 度々訪れていたクレイドルや他の精霊使いたちの姿を見なくなって、久しい。
 今や姫とともに『封の館』の中に隔離されたも同然なサーナにとって、尋ねるとすればこの子しかいない。

 しかし、アディリはどうにも取っつきにくい娘だった。
 ときに姫には優しい表情を見せるというのに、サーナに対してはあいかわらず打ち解けず、けんもほろろな態度を崩さない。

 これでは聞くに聞けないのだ。

 しかし、

(『リュイスに何か悪いことが起きてる』)

 そう言った姫の言葉が脳裏から去らない。
 単なる夢だ、夢に違いない。
 そう思いたいのに、胸騒ぎがとまらない。

(リュイス様、無事でいて)

 サーナにはそう願うしか方がない。
 彼は手紙ひとつ寄越さない。サーナも連絡を取ろうとしたことはない。

 姫の所在を隠すためにも致し方のないことだと、理解していた。

 しかし、今までは精霊使いたちを通して彼の動向を知ることができていたのに、今はそれもない。

 二人を隔てる距離。

 それが今ほど辛く思えたことはなかった。

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