一なる騎士
 顔を上げれば、アディリの水色の瞳に出会った。にらむようにサーナを見下ろしている。

「こっちをちらちら見るのやめてくれない? 授業の邪魔よ」

 冷たく突き放すような物言いに、サーナはむっとする。しかし、よく見ればアディリの水色の瞳の中には気遣わしげな表情がある。

(この子、私は心配してくれているの?)

 ほんとうはとても優しい子だよ、少し素直じゃないけれどね、といつかクレイドルが彼女をそう評したのを思い出す。

 だから、サーナは聞いてみることにした。

「ごめんなさい。実は聞きたいことがあるの」

「何?」

 アディリのそっけない返事もサーナはもう気にならなかった。この子の冷たい態度は上辺だけのこと、今はそう思えた。

「ここには結界が張ってあるから、精霊は入って来れない。力を及ぼせない、その筈ね?」

「そうよ」

「その結界ってどういうものなの?」

 聞かれて、アディリはちょっと考えるように口をつぐんだ。
 淡い色の瞳が真剣みを帯びる。

 だが、次に彼女の口から出た言葉は完全にサーナの意表をついた。




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