一なる騎士
「あなたはアスタート殿を畏れていると思っていました。彼は強敵でしょう」
「今でも畏れているさ。彼の力量を侮るつもりはない。腕は立つし、人望もある。だが、相手がどうあろうと関係ないことだ。それ以上に己がただ強くあればいいだけのことだ」
「それは……」
微塵の気負いを見せずに綴られる言葉に、クレイドルはなぜか不安げな素振りを見せた。
「私は『一なる騎士』だ。であれば、この地上のいかなる騎士にも負けるつもりはない。女神ナクシャーの名に賭けても」
クレイドルは眉をひそめた。ナクシャーは数多ある女神の名のうちでもよく知られた名でもある。手段を選ばぬ冷徹さゆえに、戦乱と災厄を司るとも言われるが、勝利に導く戦いの女神として、加護を求める武人は少なくはない。
「どうかしたか」
急に黙り込んだうえに、いつになく思いつめた色をたたえた青い瞳に気づいて、リュイスが問い掛ける。
「いえ」
クレイドルはひとつ頭をふる。
「リュイス、民はもう王を討ち取らぬ限り納得しないでしょう」
「今でも畏れているさ。彼の力量を侮るつもりはない。腕は立つし、人望もある。だが、相手がどうあろうと関係ないことだ。それ以上に己がただ強くあればいいだけのことだ」
「それは……」
微塵の気負いを見せずに綴られる言葉に、クレイドルはなぜか不安げな素振りを見せた。
「私は『一なる騎士』だ。であれば、この地上のいかなる騎士にも負けるつもりはない。女神ナクシャーの名に賭けても」
クレイドルは眉をひそめた。ナクシャーは数多ある女神の名のうちでもよく知られた名でもある。手段を選ばぬ冷徹さゆえに、戦乱と災厄を司るとも言われるが、勝利に導く戦いの女神として、加護を求める武人は少なくはない。
「どうかしたか」
急に黙り込んだうえに、いつになく思いつめた色をたたえた青い瞳に気づいて、リュイスが問い掛ける。
「いえ」
クレイドルはひとつ頭をふる。
「リュイス、民はもう王を討ち取らぬ限り納得しないでしょう」