一なる騎士
「要はさ、アスタートをどうにかすればいいだろ。あいつがいなくなれば、騎士団はばらばらになる」

「暗殺はだめです」

 話の先を見越してクレイドルは否定した。リュイスも言葉少なとはいえ断固として拒否する様子を見せる。

「問題外だ」

「どうして? 父だったら腕の立つ暗殺者を知っているよ」

「エイク殿っ!」

 あっさりと言い放たれた言葉に、思わずクレイドルは声を荒げた。
 セラスヴァティー姫に暗殺者が差し向けられた記憶はいまだ生々しい。

 しかも、当のセイファータ公爵をリュイスは有力な容疑者だと睨んでいる。
 姫への思い入れが深いリュイスが、公爵と暗殺者の関係を聞いて平静でいられるはずがあろうか。

 しかし、リュイスは眉ひとつ動かさず、問題発言をした当人のエイクもクレイドルの叱声を気にかけるふうもないどころか、逆に煽るようなことを言いだす。

「やれやれ、暗殺は騎士道に反するとか言う奇麗ごとを言うんなら、今更だよ」

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