一なる騎士

(6)降臨

「はじめ!」

 立会人であるセイファータ公爵が高く掲げた手を下ろす。
 決闘開始の合図だった。

 白と黒の騎士たちは同時に剣の鞘を払い構える。距離を取ったまま互いに隙を伺い、にらみ合う。

 と、アスタートがリュイスに話しかける。

「どうしてだ。なぜ陛下を裏切った。大地の王の守護者たる、お前が」

 ひそやかな激情を感じさせる声に、答えるのは怜悧な淡々とした声。

「裏切る? 裏切ったのはどっちだ。彼は『大地の王』をしての責務を放棄し、『大地』を裏切ったのだ。私は『一なる騎士』として、断罪せねばならぬ」

「そうか、ならば道は一つ。お前が陛下の『一なる騎士』たることをやめたというのなら、私が陛下の『一なる騎士』となろう。お前を倒してな」

 言葉が終るか終らぬうちにアスタートは思い切りよく打ち込んできた。しかしそれはたやすく受け流される。

「アスタート、私を倒しても貴方は『一なる騎士』にはなれはしない。わかっているはずだ」

『一なる騎士』は血筋によって受け継がれる。『一なる騎士』を倒したからと言ってなれるものではない。それはアスタートとて理解しているはずだった。

 しかし。

「それは私を倒してから言え」



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