一なる騎士

(7)決着

 勝利は間近だ。

 やはり力、技術ともに自分のほうが勝っている。そうアスタートは確信し、打ち込んだ瞬間だった。

 がしんと剣が鳴る。ものすごい力で押し返された。思わず一歩下がる。

(力負けした、だと?)

 剣の柄を握り直すまもなく、打ち込まれる。すばやく確実な一撃をかろうじて刀身で受け止める。火花が上がる。刀身が擦れあってぎりぎりといやな音を立てた。

 力づくで押し返すとふいに流された。

『一なる騎士』の剣先に容赦はなく、剣筋には一編の迷いもない。

 それだけではなかった。
 あまりに老練すぎるのだ。
 まだ二十そこそこの騎士の動きとも思えない。

(ばかな)

 確かに彼と最後に手を合わせてからずいぶんと経つ。

 しかし、これは。

 これでは。

(まるで別人だ)


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