一なる騎士
外伝「いまだ咲かぬ花」
 少女と青年が坂道を登っていた。
 青年は白いシャツに、薄茶のズボンという軽装。
 ふわふわとした赤茶色の髪。瞳は、明るい青色。

 男でありながらも、どこか愛らしい顔立ちである。体つきも細身で、華奢といってもいい。
 若い。二十歳になったかならずかといったところ。

 足取り軽く、山道を颯爽と登っていく。

 後を追う少女は、襟元に赤いリボンがゆれる白のブラウスに、足首までもある紺色の長いスカートをはいている。

 彼女の両肩に揺れる細いお下げはほとんど白に近い銀色。肌は抜けるように白く、鼻のあたりに薄くそばかすが散っていた。ごく淡い水色の瞳はつり上がり気味で、とがった顎とあいまって、彼女にきつい印象を与える。

 彼女の方は、青年と違って息を切らしていた。
 流れ出はじめた汗が額に彼女の色の薄い髪を貼り付けている。足首まである長いスカートのすそが足にまとわりつき歩きにくそうだ。それでも、彼女は不平を漏らそうとはしない。

「疲れたみたいだね? アディリ」

 足を止めて、青年は彼女を振り向いた。

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