一なる騎士
「私はもう精霊使いなんかじゃないわ」

 少女の返事はごくあっさりとしていた。あっさりとしすぎていた。
 クレイドルは内心ため息を落とす。

 アディリもまた『精霊の愛し子』として生まれてきたものだった。七歳になる頃にようやく精霊たちを制御する術を得、『封の館』を出た。まだ一人前とまでは言わなくても、立派に精霊使いとして通用するだけのものをもっていた。

 なのに、その力が突然に失われてしまった。
 もう二年前のこと、アディリが十歳になるかならずかの頃だった。
 あのときはほんとうに自分も迂闊だったとクレイドルは思う。

 原因はわかっていた。
 この子の気性もわかっていた。
 いや、わかっていたつもりになっていた。

 だから、あんなことを言ったのだ。
 精霊の視力を失い、絶望の中にあった彼女に。
 さらに追い討ちをかけるように。

(「このまま力が戻らないなら、君はご家族のもとに帰るしかないね」)

 と。

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