一なる騎士
「無茶をする」
心配げにリュイスはつぶやいた。
影を送るには、感覚を精霊にゆだねなければならない。そのためには、精霊との完璧な同調が必要だ。
けれど、『大地の王』がその責務を怠り、精霊たちが弱り始めているいま、それは危険な技だった。禁じられた宮廷に力を伸ばすだけでも大変なのに、下手をすれば二重の痛手を被りかねない。
「僕はかの姫よりは修行を積んでいます。それほど影響は受けませんよ」
微塵の疲れも感じさせぬ声がさらりと答える。
「聞いていたのだろう?」
宰相との密談のことである。
「ええ」
あっさりと肯定すると、彼はリュイスを見上げた。
「迷っているのですか」
「いや、気に入らないだけだ」
「でも、やめる気はない」
「そういうことだ」
簡潔なやりとりの後、長い沈黙が落ちる。
やがて、精霊使いの長は口を開いた。
「貴方もつらいですね」
心配げにリュイスはつぶやいた。
影を送るには、感覚を精霊にゆだねなければならない。そのためには、精霊との完璧な同調が必要だ。
けれど、『大地の王』がその責務を怠り、精霊たちが弱り始めているいま、それは危険な技だった。禁じられた宮廷に力を伸ばすだけでも大変なのに、下手をすれば二重の痛手を被りかねない。
「僕はかの姫よりは修行を積んでいます。それほど影響は受けませんよ」
微塵の疲れも感じさせぬ声がさらりと答える。
「聞いていたのだろう?」
宰相との密談のことである。
「ええ」
あっさりと肯定すると、彼はリュイスを見上げた。
「迷っているのですか」
「いや、気に入らないだけだ」
「でも、やめる気はない」
「そういうことだ」
簡潔なやりとりの後、長い沈黙が落ちる。
やがて、精霊使いの長は口を開いた。
「貴方もつらいですね」