一なる騎士
リュイスはわずかに口元をゆがめた。
「私のことはどうでもいいさ。姫君に恨まれるかも知れないが。それはいい。だが、一度、王とはじっくりと話をしてみようと思う。けれど、決裂するようなことなれば」
「決行というわけですね」
「時間はあまりないのだろう?」
「ええ。姫君のこともそうですが。『大地』にとってももう限界が近づいてきています。王が大地に流れる<気>を放置しているからです。いえ、今ではあの方の感情の乱れが<気>の乱れさえ呼んでいます。『大地の王』は<気>の流れを制御し、『大地』を豊穣に導くもの。けれど、それは、人一人の身には重すぎる荷なのかもしれない。この頃、そんなふうに思えてならないのです」
「そうだな」
ただ一人では背負いきれぬ荷。
『一なる騎士』は、もともとその荷をわかちあう者のはずなのに、あの王はそれを拒否した。
すべての間違いはそこからはじまったのかもしれない。
あるいは、リュイスが現王を見放したときから、か。
もしもまだやりなおせるのなら。
「今度こそは全力でぶつかってみるさ」
リュイスとて、今まで何もしなかったわけではない。
幾たびか王と話をしようと試みたのだ。
しかし、いつも話をしようとしても、近習のものたちに阻まれるか、王自身の頑なな拒絶にあうだけだった。
けれど、今度ばかりは退く気はない。
貴族たちも煮詰まっている。
「私のことはどうでもいいさ。姫君に恨まれるかも知れないが。それはいい。だが、一度、王とはじっくりと話をしてみようと思う。けれど、決裂するようなことなれば」
「決行というわけですね」
「時間はあまりないのだろう?」
「ええ。姫君のこともそうですが。『大地』にとってももう限界が近づいてきています。王が大地に流れる<気>を放置しているからです。いえ、今ではあの方の感情の乱れが<気>の乱れさえ呼んでいます。『大地の王』は<気>の流れを制御し、『大地』を豊穣に導くもの。けれど、それは、人一人の身には重すぎる荷なのかもしれない。この頃、そんなふうに思えてならないのです」
「そうだな」
ただ一人では背負いきれぬ荷。
『一なる騎士』は、もともとその荷をわかちあう者のはずなのに、あの王はそれを拒否した。
すべての間違いはそこからはじまったのかもしれない。
あるいは、リュイスが現王を見放したときから、か。
もしもまだやりなおせるのなら。
「今度こそは全力でぶつかってみるさ」
リュイスとて、今まで何もしなかったわけではない。
幾たびか王と話をしようと試みたのだ。
しかし、いつも話をしようとしても、近習のものたちに阻まれるか、王自身の頑なな拒絶にあうだけだった。
けれど、今度ばかりは退く気はない。
貴族たちも煮詰まっている。