一なる騎士
今はあの腹黒い宰相が自分に一番有利な時をねらって、彼らを抑えているが、こんなことが続けば、いつ反乱が起こるかわかったものではなかった。
『一なる騎士』としての特権を振りかざしてでも、王と話さなければならない。
それでダメなら覚悟を決めるしかない。
あの王とともに、『大地』も姫も心中させるわけにはいかないのだ。
辛くとも、それが『一なる騎士』としての勤め。
「だが、その前に、姫の身の安全を確保したい。頼めるか」
王や王の取り巻きとて、馬鹿ではない。
『一なる騎士』たるリュイスを牽制するのに、何が一番有効な手かすぐに気づくだろう。
次代の王と定められたもの。
その命運。
だが、精霊使いたちの元なら、彼らもそう簡単には手出しできないはずだ。
そして、何よりも、自分の親が糾弾される様を幼き姫に見せたくはなかった。
「わかりました。姫様はまた精霊の愛し子。もともとは我らの元で育つべきだったんです。お預かりしましょう。けれど、姫君を城外にお出しする際には、我々の手助けを当てにしないで下さい。王はセラスヴァティー様を外に出す気はないのです」
いくら優れた精霊使いでも無制限に精霊を使えるわけではない。王の望みに反することはできない。それは、王が大地の豊穣を願うものであるからこそ、有効に働いていた枷(かせ)でもあった。
「わからないな。あれほど嫌っているのに」
「愛情がないわけでもないのでしょう。けれど、愛と憎しみはいつも紙一重。愛する故に、心惹かれる故に、愛せないこともあるものです」
リュイスの顔にとまどいの表情がうかぶ。
愛ゆえの憎しみを理解するには、まだ彼は若く、真っ直ぐすぎた。
「なんだかずいぶん説教臭いことを言うんだな」
「先代の受け売りですよ」
どこか寂しげに精霊使いの長は言った。
『一なる騎士』としての特権を振りかざしてでも、王と話さなければならない。
それでダメなら覚悟を決めるしかない。
あの王とともに、『大地』も姫も心中させるわけにはいかないのだ。
辛くとも、それが『一なる騎士』としての勤め。
「だが、その前に、姫の身の安全を確保したい。頼めるか」
王や王の取り巻きとて、馬鹿ではない。
『一なる騎士』たるリュイスを牽制するのに、何が一番有効な手かすぐに気づくだろう。
次代の王と定められたもの。
その命運。
だが、精霊使いたちの元なら、彼らもそう簡単には手出しできないはずだ。
そして、何よりも、自分の親が糾弾される様を幼き姫に見せたくはなかった。
「わかりました。姫様はまた精霊の愛し子。もともとは我らの元で育つべきだったんです。お預かりしましょう。けれど、姫君を城外にお出しする際には、我々の手助けを当てにしないで下さい。王はセラスヴァティー様を外に出す気はないのです」
いくら優れた精霊使いでも無制限に精霊を使えるわけではない。王の望みに反することはできない。それは、王が大地の豊穣を願うものであるからこそ、有効に働いていた枷(かせ)でもあった。
「わからないな。あれほど嫌っているのに」
「愛情がないわけでもないのでしょう。けれど、愛と憎しみはいつも紙一重。愛する故に、心惹かれる故に、愛せないこともあるものです」
リュイスの顔にとまどいの表情がうかぶ。
愛ゆえの憎しみを理解するには、まだ彼は若く、真っ直ぐすぎた。
「なんだかずいぶん説教臭いことを言うんだな」
「先代の受け売りですよ」
どこか寂しげに精霊使いの長は言った。