一なる騎士
(8)敵対の予感
警備隊長アスタートの王宮での居室は、広いばかりで飾り物ひとつない。
簡素で、実用一点張りの椅子とテーブルがあるばかりである。
不要な物は一切おかない主義なのだろう。
持ち主の性格を反映しているともいえるが、そのせいで、妙に寒々しい印象を与える部屋である。
そこに、アスタートのみならず、『一なる騎士』リュイスの姿があった。
彼らの話し声は低い。
隣室に眠るサーナとセラスヴァティー姫を気づかってのことだった。
「言っておくが、王の命ではないぞ」
「わかってます。王の御意志のもとに行われたのなら、精霊たちに手出しはできなかったでしょう」
気丈な侍女は、泣きながらも事情を説明した。
暗殺者に襲われたこと、姫を護ろうとしたこと。
そして、突然の暗殺者の死。
激しい風と燃え上がった炎。
それは、まさしく幼い姫を傷つけようとしたものに対する、精霊の怒りだったのだろう。
「精霊に愛されし姫か」
衛兵総出で手を尽くしたものの、火の勢いはとまらず、小屋は全焼し、奥庭の森にもかなり被害が出た。
「しかし、あれはいくらなんでもやりすぎだ」
精霊の怒りは、限度を知らないようだった。
せめて片方でいいから、命があれば、暗殺を指図したものの情報も取れたかもしれないが、死人に語る口はないうえに、さらにああもきれいさっぱり焼きつくされていては、身元の確認すら不可能だろう。
「姫に精霊の制御は無理ですから」
リュイスは唇をかむ。
簡素で、実用一点張りの椅子とテーブルがあるばかりである。
不要な物は一切おかない主義なのだろう。
持ち主の性格を反映しているともいえるが、そのせいで、妙に寒々しい印象を与える部屋である。
そこに、アスタートのみならず、『一なる騎士』リュイスの姿があった。
彼らの話し声は低い。
隣室に眠るサーナとセラスヴァティー姫を気づかってのことだった。
「言っておくが、王の命ではないぞ」
「わかってます。王の御意志のもとに行われたのなら、精霊たちに手出しはできなかったでしょう」
気丈な侍女は、泣きながらも事情を説明した。
暗殺者に襲われたこと、姫を護ろうとしたこと。
そして、突然の暗殺者の死。
激しい風と燃え上がった炎。
それは、まさしく幼い姫を傷つけようとしたものに対する、精霊の怒りだったのだろう。
「精霊に愛されし姫か」
衛兵総出で手を尽くしたものの、火の勢いはとまらず、小屋は全焼し、奥庭の森にもかなり被害が出た。
「しかし、あれはいくらなんでもやりすぎだ」
精霊の怒りは、限度を知らないようだった。
せめて片方でいいから、命があれば、暗殺を指図したものの情報も取れたかもしれないが、死人に語る口はないうえに、さらにああもきれいさっぱり焼きつくされていては、身元の確認すら不可能だろう。
「姫に精霊の制御は無理ですから」
リュイスは唇をかむ。