一なる騎士
どんっ!
アスタートの部屋を出るなり、リュイスは廊下の石壁を、きつく固めた拳で叩いた。
音が響いたかもしれなかったが、別にかまわない。
まったく我ながら不甲斐ないと思う。
一番、大事なときに側にいてやれなかった。
守ってやれなかった。
そして、何よりも悔しいのは、姫を襲わせた張本人に確信があるのに、それを口にすら出せないことだった。
証拠がない。
と言うこともある。
相手が実力者である。
と言うこともある。
しかし、何より今は時期が悪い。
(アスタート卿の言うとおりだ。今は動けない)
しかし何と言うことだろう。
好ましく思い、頼れる存在がいずれ敵になり、油断がならないうえに、姫の暗殺を目論んだ張本人を味方として戦わねばならないとは。
だが。
(セイファータ公爵、貴方の好きにはさせない。けっして)
リュイスの端麗な横顔には、強い決意の色が浮かび上がった。
アスタートの部屋を出るなり、リュイスは廊下の石壁を、きつく固めた拳で叩いた。
音が響いたかもしれなかったが、別にかまわない。
まったく我ながら不甲斐ないと思う。
一番、大事なときに側にいてやれなかった。
守ってやれなかった。
そして、何よりも悔しいのは、姫を襲わせた張本人に確信があるのに、それを口にすら出せないことだった。
証拠がない。
と言うこともある。
相手が実力者である。
と言うこともある。
しかし、何より今は時期が悪い。
(アスタート卿の言うとおりだ。今は動けない)
しかし何と言うことだろう。
好ましく思い、頼れる存在がいずれ敵になり、油断がならないうえに、姫の暗殺を目論んだ張本人を味方として戦わねばならないとは。
だが。
(セイファータ公爵、貴方の好きにはさせない。けっして)
リュイスの端麗な横顔には、強い決意の色が浮かび上がった。