一なる騎士

(3)天啓

 大地の剣ルイアス
 太古の昔、降臨した大地の女神によって授けられた剣。
 荒ぶる精霊たちを鎮め、豊穣をもたらし、大地とその民との強き絆となるもの。

 剣を託すに足るものを見出し、剣との絆を結ぶのが、『一なる騎士』。
 剣を託されたものは『王』になる。

『大地』を守り、『大地の民』を導くものになる。
『一なる騎士』は『大地の王』を選ぶもの。
 王の最大の守護者となるもの。

 そして、もうひとつ。
『一なる騎士』には重要な役目がある。

 王が道を誤ったとき、大地の剣の力をやみくもにふるったとき、『一なる騎士』は王の断罪者となる。大地の剣ルイアスとの絆を結ぶのが『一なる騎士』なら、絆を断つのも『一なる騎士』。王の守護者にして断罪者。相反する勤めを持つもの。

 しかし、もう何代も前からか、『一なる騎士』の役割は形骸化していた。
 有力な貴族たちの言うがままに王を選び、後は、式典の度に呼び出される程度。
 それなのに、どうして、自分がここまで陛下に疎まれるのか、リュイスは未だにわからなかった。

 現陛下にはじめてあったとき、これほどは疎まれてはいなかったと思う。
 そのときは、まだ陛下は王子方の一人に過ぎなくて、自分もまた『一なる騎士』の称号を受け継いだとはいえ、ほんの八才の子どもに過ぎなかった。

『大地の王』としてふさわしい方なのかどうかまではわからなかった。すこし強面で、怖そうな人だと思ったが、実際は優しい方だった。まわりの大人たちに言われるがままだったとはいえ、彼を王に選ぶことに抵抗はなかった。


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