一なる騎士
 先ほどよりも薄くなった朝靄に、飲み込まれていく三つの人影を見送りながら、王妃は側に立つアスタートに話しかけた。

「アスタート」

「はい」

「貴方だけは、最後まで、あの人の味方でいてくれますか?」

「もちろんです」

「感謝しますわ」

 もう彼らの姿は見えない。
 目を閉じた王妃のやわらかな頬を、一筋の滴が流れ落ちていった。

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