一なる騎士
正式の名を呼ぶ。
「セラスヴァティー様」
小さなやせ細った肩に手をおくと、まっすぐな新緑のまなざしがかえってきた。
「覚えていて下さい。私はあなたを悲しませるかもしれない、怒らせるかもしれない。けれど、我が姫、たとえ何が起ころうとも私はあなただけの騎士です。それだけは、けっしてお忘れなきように」
一なる騎士の真剣な瞳に、大地の姫はまた真剣に応じた。
ひどく神妙にうなずく。
「うん、わかった。忘れない」
「ありがとうございます」
立ち上がろうとしたリュイスを、ふいに小さな手が引き留めた。
「リュイス、言ってない」
「え?」
「リュイス、サーナに何も言ってない」
責めるようなまなざしに、リュイスはたじろいた。
「セス様、何をおっしゃっているんですか?」
「だって、会えなくなるのに、リュイスはサーナにちゃんと言ってない。そんなのだめ」
もどかしげに、けれど、一生懸命に自分をにらむセスにリュイスは知らず驚嘆のまなざしを向けていた。
人並みはずれて勘がいいとは思っていたが、まさかここまでとは。
「セス様のおっしゃる通りですね」
リュイスの真の主には、けっして嘘やごまかしは通用しない。
「ここで何も言わないのは、確かに騎士としても不甲斐ない」
明確な決意の色をのせて、つぶやく。
あらためて立ち上がった。今度は小さな手も引き留めない。
「サーナ」
「はいっ!」
リュイスの黒曜石の瞳が、ひどく真剣にサーナを見つめていた。
思わず勢いよく返事をしてしまったサーナは、頬を染めて唇を手で押さえた。
「この先、何があるのか、何が起こるかわからない。だから、何も言えなかった。私には何も約束できないのに、君を縛るようなことは言えなかった。けれど、姫君はそれではご立腹のようだ、だから……」
ためらうかのようにリュイスは視線を落とす。
と、まるで力づけるように一心に見上げるセラスヴァティー姫のまなざしに出会う。
「セラスヴァティー様」
小さなやせ細った肩に手をおくと、まっすぐな新緑のまなざしがかえってきた。
「覚えていて下さい。私はあなたを悲しませるかもしれない、怒らせるかもしれない。けれど、我が姫、たとえ何が起ころうとも私はあなただけの騎士です。それだけは、けっしてお忘れなきように」
一なる騎士の真剣な瞳に、大地の姫はまた真剣に応じた。
ひどく神妙にうなずく。
「うん、わかった。忘れない」
「ありがとうございます」
立ち上がろうとしたリュイスを、ふいに小さな手が引き留めた。
「リュイス、言ってない」
「え?」
「リュイス、サーナに何も言ってない」
責めるようなまなざしに、リュイスはたじろいた。
「セス様、何をおっしゃっているんですか?」
「だって、会えなくなるのに、リュイスはサーナにちゃんと言ってない。そんなのだめ」
もどかしげに、けれど、一生懸命に自分をにらむセスにリュイスは知らず驚嘆のまなざしを向けていた。
人並みはずれて勘がいいとは思っていたが、まさかここまでとは。
「セス様のおっしゃる通りですね」
リュイスの真の主には、けっして嘘やごまかしは通用しない。
「ここで何も言わないのは、確かに騎士としても不甲斐ない」
明確な決意の色をのせて、つぶやく。
あらためて立ち上がった。今度は小さな手も引き留めない。
「サーナ」
「はいっ!」
リュイスの黒曜石の瞳が、ひどく真剣にサーナを見つめていた。
思わず勢いよく返事をしてしまったサーナは、頬を染めて唇を手で押さえた。
「この先、何があるのか、何が起こるかわからない。だから、何も言えなかった。私には何も約束できないのに、君を縛るようなことは言えなかった。けれど、姫君はそれではご立腹のようだ、だから……」
ためらうかのようにリュイスは視線を落とす。
と、まるで力づけるように一心に見上げるセラスヴァティー姫のまなざしに出会う。