一なる騎士
第3部 女神の理
(1)王と騎士
奥宮へとつづく中庭を渡りながら、リュイスはうらめしげに空を見上げた。
雲一つない、晴れ渡った青空。
太陽が高く昇っている。もう昼になろうとしていた。
日差しがまぶしい。
気温もかなり高い。
黒い瞳が、まぶしげに細められた。
『一なる騎士』の黒い正装は、とても夏向きのものとは言えない。
けれど、今日ばかりは着替えたいとは思わなかった。
額に汗で張りついた黒い髪を、無意識にはらう。
もう一月ほど、雨が降っていなかった。
庭の草木も乾き、色あせて元気なく見える。
庭師たちが汲み上げた井戸水を撒いているはずだが、それだけではとても足りないのだろう。
今年の夏は曇り空がつづき、それほど暑くなかったというのに、夏も終わろうとするこの時期に、照りつけるような日差し。
何をしなくても汗がにじみ出るような暑さ。
その癖、朝夕は気を抜くと風邪を引きかねくらい冷え込む。
季節が狂っていた。
異常としかいいようがなかった。
そして、異常の原因は、はっきりしていた。
リュイスは今度こそ、異常の源と対決するつもりだった。
すなわち、『大地の王』と。
姫が王宮から姿を消して、かの人の乱行は目を覆わんばかりとなった。
城の警備体調のアスタートは姫と距離を置かせることで、王が立ち直ることを期待したようだが、それは逆効果に終わった。
毎夜のごとく行われる酒宴。
王は深夜遅くまで、美食と酒と女に溺れるようになった。前はかろうじて行われていた政務も、今は完全に放棄してしまっている。いや、現実すらも拒否しているかのように。
起き出すのも、昼に近い頃。
酒の入らない、わずかな正気の時間。
まともな話が出来るのは、そのときだけだという。
リュイスは足を速めた。
雲一つない、晴れ渡った青空。
太陽が高く昇っている。もう昼になろうとしていた。
日差しがまぶしい。
気温もかなり高い。
黒い瞳が、まぶしげに細められた。
『一なる騎士』の黒い正装は、とても夏向きのものとは言えない。
けれど、今日ばかりは着替えたいとは思わなかった。
額に汗で張りついた黒い髪を、無意識にはらう。
もう一月ほど、雨が降っていなかった。
庭の草木も乾き、色あせて元気なく見える。
庭師たちが汲み上げた井戸水を撒いているはずだが、それだけではとても足りないのだろう。
今年の夏は曇り空がつづき、それほど暑くなかったというのに、夏も終わろうとするこの時期に、照りつけるような日差し。
何をしなくても汗がにじみ出るような暑さ。
その癖、朝夕は気を抜くと風邪を引きかねくらい冷え込む。
季節が狂っていた。
異常としかいいようがなかった。
そして、異常の原因は、はっきりしていた。
リュイスは今度こそ、異常の源と対決するつもりだった。
すなわち、『大地の王』と。
姫が王宮から姿を消して、かの人の乱行は目を覆わんばかりとなった。
城の警備体調のアスタートは姫と距離を置かせることで、王が立ち直ることを期待したようだが、それは逆効果に終わった。
毎夜のごとく行われる酒宴。
王は深夜遅くまで、美食と酒と女に溺れるようになった。前はかろうじて行われていた政務も、今は完全に放棄してしまっている。いや、現実すらも拒否しているかのように。
起き出すのも、昼に近い頃。
酒の入らない、わずかな正気の時間。
まともな話が出来るのは、そのときだけだという。
リュイスは足を速めた。