一なる騎士
 けれど、いつの頃からだったろう。

 気がつくと、王は『一なる騎士』である自分をけっして側に寄せつけず、その癖、公式の場においては、『一なる騎士』として、振る舞うよう要求した。いまだ見習い騎士に過ぎない彼が、宮廷では『一なる騎士』の正装をさせられるのはそのせい。けっきょく、彼はていのいいお飾りにすぎない。

 はじめは、自分が子どもだからだと思っていた。『一なる騎士』足り得ないからだと。
 だから、がんばった。自分なりに『一なる騎士』足るべく努力した。

 けれど、彼の努力が実を結べば結ぶほど、王はますます彼を遠ざけていくような気がしてならなかった。
 自分の努力は無駄だったということか。
 それとも、やはり、まだ自分は未熟だと言うことか。
 どんなに頑張ってみても、『一なる騎士』になり得ないと言うことか。

 積み重なる無力感が彼のやる気を削いでいき、あきらめの境地に押し流そうとしていた。

 思いもかけないサーナの言葉は、そんなリュイスの惰弱さを直撃した。そして同時に、真剣に自分に心を砕く少女の思いやりに心癒されるものを感じた。
 そう、諦めるには、まだ速すぎるのだ。

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