一なる騎士
「どうか『大地の王』としての責務をお果たし下さい。酒精に溺れ、『大地』をおろそかにするなど、『王』のすることではありません。不穏な天候に、病虫害。ここ四年の間に収穫は激減しています。民は日々の糧にすら事欠く始末です。どうか、『大地』の豊穣を、安寧を願って下さい。『王』として、『大地』を正しく導いて下さい。そのためなら、いかようにもお手伝い致しましょう」

 ヴィドーラは、何も言わず、リュイスを不思議なものを見るかのように、眺めているだけだった。

 不審に思いながらも、リュイスは思い切って続ける。

 どうしても、これだけは告げなくてはならない。

「でなければ、私は貴方を断罪しなくてはならなくなる」

 しかし、それでも、王は反応を示さない。
 たまらず、呼びかける。

「陛下?」

「くっ、くく」

 肩がかすかに震えていた。
 くぐもった笑い声は、やがて哄笑へと変わった。

「ふっ、はははははははっ」

「陛下っ!」

 リュイスは思わず近寄ると、ヴィドーラの肩をつかんで、ゆさぶった。

「何がっ、何が、おかしいんですか?」



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