一なる騎士
 王妃の寝所に入ると、王妃が待ちかねたようにベッドから半身を起こした。
 かつて王国一の美姫と唄われた彼女は、いまだにその容貌の衰える兆しはない。

 滝のように流れる金の髪も、湖のように澄んだ青い瞳も、白亜の肌も、一片の不均等のない絶妙な美貌も、少女の頃のままだ。いや、少女のその頃よりも、今の成熟した彼女の方がまばゆいばかりに美しいと言ってよかった。

 リュイスに向けられた澄んだ青い瞳には、疲労の色があったが、同時に大きな仕事をし終えた誇らしげな輝きがある。リュイスも産直後の姉に同じ輝きを見たものだった。

「姫様のご誕生おめでとうございます、王妃様」

 リュイスの型通りの祝福の言葉に、王妃は何のてらいもない最上の微笑で応じた。

「よくいらっしゃいました、一なる騎士様。どうか、我が娘に祝福を」

 そうして、胸に大事そうに抱いた赤子をリュイスにさしむけた。

  

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