一なる騎士
 横合いから、とつぜん飛び出してきた小さな人影を避けられない。
 そのまま足に飛びつかれた。

「わっ」

 驚いたのか小さな悲鳴があがる。
 見れば、まだ幼い少年であった。姫よりもずっと大柄で、体つきもしっかりしている。六、七歳に見えたが、その割に少し舌足らずな口調で問いかけられる。

「おじさん、だれ?」

「おじ……」

 まだ二十二歳のリュイスはあんまりな言われように絶句する。

(しかし、この子……)

 似ているのだ、姉に。

 短く切られた髪は、やわらかそうな薄茶の巻き毛。瞳は明るい栗色。年相応に可愛くはあるが、取り立てて人目を引くわけでもない、どちらかというと凡庸な容貌である。

 着ているのは白い絹の半袖シャツに茶色のつりズボン。転んだのか泥汚れが飛び散っていたが、かなり上等な品であることが一目で見て取れた。
 使用人の子どもと言うことはないだろう。

 となれば。

「君は……」

 腰を落として瞳をのぞき込むと、栗色の瞳に一瞬不安そうな表情がよぎる。落ち着かなげに足を動かす。

「もしかして、レイル?」


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