一なる騎士
「にしても、ほんと見かけは似てないのに服の趣味は姉弟そっくりだね。そんな物陰に埋もれてしまうような黒い格好ばかりしているから、気分まで暗くなるんだ。レイルも将来そんなものばかり着せられるだなんて、考えただけでぞっとする」

 今日のリュイスの服装は、『一なる騎士』の略装である。

 黒の厚めの上着に黒の剣帯を腰に巻き、下げられた剣の皮鞘も黒に染め上げられている。むろんズボンも長靴も黒い。

 確かに華やかさとは対局にある。

 着ている服の色で気分が左右されると言うのは、ありえない話ではないとリュイスも思う。

 しかし、だからと言って、義兄が着ているような頭の痛くなるような派手派手しい配色の服は絶対に、いや断固として着たくはない。『一なる騎士』の正装が地味な黒でよかったと切実に思う瞬間だった。

「ま、今でもレイルの格好は地味だよな。サジェルは僕が買ってやった服、絶対にレイルに着せないし。だいたいサジェルもレイルも君と違って、顔立ち自体は平凡なんだから、あんな地味な服着てたら、よけい暗くなるじゃないか。そう思わないか?」


< 94 / 212 >

この作品をシェア

pagetop