一なる騎士

(8)世界の構図

「僕はね、父の野望に力を貸す気なんてさらさらないんだ」

 馬を背後の木立につなぎ、リュイスとエイクは草の上に並んで腰を下ろしていた。

「しかし、父は、自分より有能な、それでいて邪魔になるような存在を排除する傾向がある。それはもうあっさりと。たとえ自分の息子だって容赦はない。僕だって我が身はかわいいからね。毒にも薬にもならない役立たずと思われている方が、なにかと都合がよかったし」

 いまやリュイスの義兄は抜き身の刃のような剣呑さを垣間見せながらも、飄々とした態度を崩さない。
 
 ある意味とてもわかりやすい性格のセイファータ公爵などより、よほど厄介な相手かも知れなかった。

「だから、いつもそんな格好なんですか?」

 この異様なほどに派手な出で立ちは、人目を欺くにはたしかに打ってつけだろう。
 人は得てして外見にだまされやすい。

 リュイスとて、ほんの数刻前までは彼の見かけにすっかりだまされていた。
 脳天気なだけの放蕩者だと思っていたのだ。
 彼がこんなにも真意の読めない人間だとは思いもよらなかった。

「そんな格好? 心外だな。これだから四角四面で洒落心のない人間はつまらないんだ」


< 96 / 212 >

この作品をシェア

pagetop