一なる騎士
 うつむいて唇をかむリュイスを、エイクは流し見るとひとつため息をついた。

「君もつくづく損な性分だな」

 独り言のようにエイクは言うと、視線を眼下に移した。
 金色に輝く平原が薄闇に沈もうとしていた。セイファータ城もすでに黒くわだかまった影にしか見えない。髪を吹きさらう風も冷たくなってきていた。

 日が暮れきってしまうまで間がないだろう。

「あまり時間がない。とにかくひとつだけ忠告をしたかったんだ。あの姫を王に据える気なら、彼女の兄弟をできるだけはやめに廃することだ。もちろん王妃もだ。彼女はもともと王家の血筋だし、幼い王の後見には格好の立場だ。王子たちよりも始末に悪いかもな」

 語られる内容に反して、口調だけはどこか楽しげである。

 しかし、灰色の瞳に浮かぶのは情のかけらも感じさせない冷徹な光。

「それは、まさか……」

 リュイスの端麗な貌が強張った。
 知らず息を飲んでいた



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