一なる騎士
「貴方のほうがよほど物騒だ」
「その様子なら薄々考えていたんだな。なのに、今更何をためらっているんだ? 君は『一なる騎士』だろう。王を守るためには手段を選びはしないんじゃないのかい?」
「言われるまでもないことです。だが、そんなことをあの方は望まない」
真の主を守るためならば、リュイスは己の手を汚すことに何の躊躇いも持たないだろう。とはいえ、これとそれとでは話が異なる。
父に疎まれても、けっしてその父を慕うことを止めなかった姫だ。
兄弟や母を失えば、悲しむ程度のことですみやしないことは想像に難くない。まして、それが自分のためだと知れば、どれほど傷つくことか。
姫を守るために、姫の心を傷つけてしまっては本末転倒だ。
「ほんとうに君はわかっているのか。古来から『一なる騎士』とは影なんだよ。『王』を光輝くもの、闇に無縁のものとして守るために、自ら手を汚すことを厭わない。けっして歴史の表舞台には出ない影の部分。血塗られた道を歩むもの。それが『一なる騎士』だ。奇麗事だけで勤まるものではない」
「だから、彼らを殺せと言うのですか」
激昂を滲ませた低い声。
黒曜石の瞳に明らかな怒りの表情が宿る。
しかし、エイクはまったくひるまなかった。
「その様子なら薄々考えていたんだな。なのに、今更何をためらっているんだ? 君は『一なる騎士』だろう。王を守るためには手段を選びはしないんじゃないのかい?」
「言われるまでもないことです。だが、そんなことをあの方は望まない」
真の主を守るためならば、リュイスは己の手を汚すことに何の躊躇いも持たないだろう。とはいえ、これとそれとでは話が異なる。
父に疎まれても、けっしてその父を慕うことを止めなかった姫だ。
兄弟や母を失えば、悲しむ程度のことですみやしないことは想像に難くない。まして、それが自分のためだと知れば、どれほど傷つくことか。
姫を守るために、姫の心を傷つけてしまっては本末転倒だ。
「ほんとうに君はわかっているのか。古来から『一なる騎士』とは影なんだよ。『王』を光輝くもの、闇に無縁のものとして守るために、自ら手を汚すことを厭わない。けっして歴史の表舞台には出ない影の部分。血塗られた道を歩むもの。それが『一なる騎士』だ。奇麗事だけで勤まるものではない」
「だから、彼らを殺せと言うのですか」
激昂を滲ませた低い声。
黒曜石の瞳に明らかな怒りの表情が宿る。
しかし、エイクはまったくひるまなかった。