年下の君に恋をして
次の日から、目が回るほど忙しい日々が始まった。

仕事を一週間で人に引き継ぐため、作業手順を文書化したり、説明したり…

悪阻はますます酷くなり、ろくにご飯を食べられなくて、身も心もクタクタだった。恵美が心配して、仕事を手伝ってくれたのは、心底有り難かった。

翔にはあの日以来会っていない。この一週間は、残業が続くので会えないと、メールで伝えたから。

このまま、翔に『さよなら』も言えないのかな…

トボトボと家に帰ると、アパートの前に黒塗りの車が停まっていた。
階段を上がりかけたところで、後ろから声を掛けられた。

「高木さんですよね?」

振り向くと、きちんと濃紺のスーツを着た中年の男性が、私に近付いて来ていた。
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