年下の君に恋をして
「はい、そうですが、何か…」

「夜分遅くに申し訳ありません。主の小田嶋が貴女とお話がしたいと申しておりまして…」

小田嶋とはもちろん翔の苗字だ。という事は…

「これからですか?」

「はい。よろしければ…」

言葉とは裏腹に、私に有無を言わせない雰囲気に、私は観念するほかないと思った。

「分かりました」

「では、こちらへ」

その男の人は黒塗りの車へ行くと、後部のドアを開いて私に乗るよう促した。

恐る恐る乗り込むと、やはり中年で、仕立の良さそうなグレーのスーツを着た男性が座っていた。

「失礼します」

「こちらこそ」

男性の声は低く、威厳を感じさせるものだった。


「近くで、落ち着いて話が出来そうな所へやってくれ」

私に声を掛けた男性は運転席に乗り込み、『かしこまりました』と言って、車は静かに走り始めた。
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