年下の君に恋をして

「『どうして』ですって？ それはこっちの台詞よ！
黙って聞いてれば…。あなたは世間体や商売の方が有紀子より大事なの？」

「母さん…」

「生憎、私には娘達より大事な物はこの世にないの。その娘が困ってれば、私は体を張ってでも娘を守るわ。世間が何と言おうと、客が来なくなったとしてもね」

「俺だって娘は大事さ。だからちゃんと結婚して、幸せになってほしいんだよ」

「有紀子にはそれなりの事情があるんだから、仕方ないでしょ？」

「まさか、有紀子がこんなに強情だとは思わなかったよ」

「有紀子は父さんに似たから頑固なのよ。知らなかったの？」

「そう言えば、有紀子は昔から、こうと決めたら何がなんでもやる子だったな」

「そういう事。で、どうするの？」

「もう俺は何も言わないから、誰も出て行かないでくれ」

「世間がどう言おうと、有紀子を守ってくれる？」

「ああ、守るよ」

父は母の剣幕に気おされ、シュンと項垂れた。
こんな父や母は、今までに見た事ないと思う。

「分かったわ。有紀子、そういう事だから、あなたはこの家にいて、丈夫な赤ちゃんを産む事だけ考えなさい。ね？」

「お母さん、ありがとう。お父さん、ごめんなさい…」

私は母の胸で、子供のように泣いた。