年下の君に恋をして
「え?」

もう翔は笑ってなかった。

「俺は一人っ子なんだ。兄弟がいるって、羨ましいよ」

「そうなんだ…。ねえ、翔?」

「ん?」

「翔の事、もっと知りたいな」

「………」

「話したくなければ、無理にとは言わないけど…」

「いや、有紀子には話すよ。と言うか、むしろ聞いてほしい」

「翔…ありがとう」

「親父は会社の社長。お袋は…俺が小さかった頃、出て行った」

「………!」

「まだ俺は小学校へ入る前で、どんな顔だったかも覚えてない。写真もないし。ただ…綺麗で、いい臭いがしてた事だけ覚えてる」

「どうして、出てっちゃったの?」

「分からない。親父に聞いても、教えてくれないんだ。『お前の母親は俺達を捨てたんだ』としか言わないんだ。

祖父ちゃんや祖母ちゃんに聞いても、同じ事しか言わない」
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