年下の君に恋をして
「もう、ふざけないで!」

「ごめん。そう聞かれるとつい有紀子って言っちゃうんだよなあ。我ながらベタだなと思うよ」


「はい、ア〜ンして?」

口の前に唐揚げを持って行くと、翔はパクッと口に含み、モグモグしてる。

「どう? しょっぱくない?」

「ちょうどいい。美味しいよ。
有紀子はどれ食べる?」

「ん…プチトマト」

「おお。あれ、これ掴みにくいなあ。よっと、あ〜んして?」

「あ〜ん」

「ぶっ」

「な、何よ?」

「有紀子って、自分でも『あ〜ん』って言って口開けるんだな」

「おかしい?」

「ん…可愛い」

もう…翔ったら……


それから私達は、手を繋いで山道を下った。学校の話とか、仕事の話とかをしながら。

翔が柔道の有段者だという事も分かった。

「それじゃあ、あの時、不良の子を柔道の技で投げたのね?」

トシヤという子が、一瞬で宙に舞った時の事だ。

「ちょっと足を掛けただけだよ。出足払いというやつ」

「ふ〜ん。柔道って、すごいのね」

「有紀子のボディーガードに雇ってもらえるかな?」

「いいわ、雇ってあげる」
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