だから君に、恋をする。
「…俺重症だわ、これ。」
「あぁ確かに親友の頼みを忘れるなんて重症だな。」

と。まだ根に持つマヌケな声で、ほつれた糸の大洪水はあっさりダムから抜けて行った。

「…お前、まさか天川さんに惚れたんじゃないだろうな。」

まさか。いかにも不機嫌です!な顔の平凡ノーベル、勇人に視線を向けた。

「馬鹿言え。」

そう、そんな馬鹿なことはありえない。というかあってはならない。天川カレンは勇人の惚れた女で、俺はそれを応援する義務があって。約束した手前、責任、ともいうか。

――だからこれは恋じゃない。

「俺はあいつにそんな感情は持たない。」
「だよなー。お前、恋とか興味なさ気だし…ぁぁあ無駄な青春だよ。」

うるせぇ。…そう、これで解決だ。いつものように勇人は部活、俺は帰宅。なんの問題もない。

「まぁ応援はしてやるから。」
「おう!さんきゅ、俊樹!じゃ、また明日!」

正当化を終え、立ち上がる勇人を見送る。


なんの問題もない。
これが最善。

軋む心を抱え、ゆっくり教室から出ていく。


――このもやもやはなんだろう。


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