だから君に、恋をする。


「――…」

その。凜とした声に、おもわず顔を向けた。その、先に。

「…天川」
「ああああ天川さん!」

たなびく亜麻色。紺色のロングスカートを揺らし立つその姿は、まさに"委員長"と呼ぶに相応しい、気丈さ。

天川カレン。

隣でうざいくらいきょどる親友、勇人の好きな女――。

「…何をしているの?下校時間は過ぎているはずだけど…。」
「あ、す、すみません!えっとその…あ、こいつ、補習で!」

あぁそうだな「俊樹に天川さんに告る無謀計画を暴露してました」なんて言えねぇよな。
でもな、残念ながら俺は学年十位以上に食い込む秀才で…。

「あぁ、そうだったの。こちらこそごめんなさい…気を悪くしないでね。」

騙されるわけないはず…なんだがな。あれ、ちょっと凹んできた。さすが学年一位。下々には興味なしですか。

「でももうすぐ見回りの先生がくるでしょうから…あまり長居しないほうがいいわ。」
「あ、そ、そうなんですか!ありがとうございますッ!」

がば、と、頭を下げる勇人。なんだその対応の違いは。野球部顧問以外の先生にはそんな対応しねぇだろ、お前。

「行くぞ俊樹!」
「あ、あぁ…。」

そのまま俺の手を掴み、立ち上がる。…真っ赤になっちまって、あーあ。

「じゃ、じゃあ失礼します!」
「えぇ、またね。」

と。
扉の前に立つ天川の横を、通り過ぎようとした瞬間。


「……あなたも。またね、俊樹くん。」


「――…」

小さな声で囁かれたと同時にかけられた微笑みに、何故か小さな悪寒を感じた。



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