だから君に、恋をする。
……勇人の作戦はこうだ。まず、偶然を装い廊下の前で待ち伏せた俺が天川に話しかける。
んで、俺が天川に勇人くんと呼んでくれと頼む。
…以上。
「……思いきり他力本願じゃねぇか、あのあほう。」
つか怪し過ぎんだろ。ありえないだろ。阿保だろあいつ。
「まぁ…頼まれたからにはやるけどよ…。」
天川のクラスは、俺らのクラスの隣。
それならまぁ偶然鉢合わせーなんてのもあるかもだが、残念ながらそんなこと今までに一度もなかったことを考えれば、恐らく。
「…アイツ、弁当だろーな。」
教室に引きこもってそうなイメージがむんむんする。
学食なんて、そんな下々と食事なんてしませんわー的な……、
「……あら、俊樹くん。」
的な…、
「…あ…天、川」
的な。
…あれ?目の前にはキョトンとしている女神。…これは、なんという。
「あ、天川学食なんだ?」
「いえ、今日はお弁当忘れちゃって…。」
あー、なるほど。なんて偶然。勇人、ラッキーマンだな、お前。よかったな、平凡ノーベルとはおさらばかもしれねぇ。
「…あー、天川。」
「ぁ、もしかして俊樹くんも学食?一緒に食べない?」
「あ、いやその…俺は…。」
「食べない?」
……う。その目は明らかに反則だろ。くそ。
「まぁ…いいけど。」
「ありがとう…今日一緒に食べてる子休みで。」
本当にありがとう。
…そんな顔で礼なんか言われたら、断れるもんも断れない。
購買のおばちゃんゴメン。
今日だけは、学食に浮気します。