短編集 僕らのヘヴン
純情プロポーズ

「うい」

「あ、ありがと‥」



藤原から受け取った、まだ冷たいジュースの缶を、頬にくっつけた。



「もうすぐだね」

「ん?」

「藤原、退学するんでしょ」

「‥‥‥‥‥」

「ごめんね、噂で聞いちゃった」

「そっか」

「うん」



少しの沈黙がやけに切なくて、泣きたくなった。



「‥できることなら、俺の口からちゃんと言いたかったな」



藤原は困ったように笑いながら、空を仰いでいた。

その横顔は、すごく綺麗で。



「佐波」

「なーに?」

「涙出てる」

「あっ、れ?」



知らないうちに溢れていた涙に気付いたとき、それはもっと大きな感情に膨れ上がってしまった。



「藤、原‥っ」

「泣くなよ」

「あたし、藤原が、好き‥だよ」

「うん」

「もっと一緒に居たかったの」

「うん」

「やめないでよ、ねぇ‥」



私が何を言おうと辞めるという覚悟は変わらないのだろうけど、

ただ、想いを伝えたかった。



「なあ佐波」

「‥はい」

「俺がもし胸を張ってお前のことを守れると言えるようになったら、」

「うん?」

「結婚、しよう」

「‥‥え?」

「俺だって佐波のこと好きだ。離れたくねえよ。」

「‥‥‥‥‥」

「でも、夢は諦められねえ。だから、せめて、今言っておきたい。」

「うん」



「だいすき」



この空に想いをのせて、夢を叶えた藤原に届けよう。

夢を叶えられるのは、貴方しかいないんだよ。




(離れてもずっと、)
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