短編集 僕らのヘヴン
いろかざり
日曜日の午後を飾る子供たちの声。
ふと、貴方を思い出したんだ。
「もしもし」
「もしもし、寝てた?」
「いや、寝てねえけど」
「今から会おうよ」
「‥‥‥は?」
だいくんの「は?」は怒っていない。
笑ったような声だった。
「ねぇ、会える?」
「会える」
「じゃあだいくん家行っていい?」
「来なくていいよ、俺がそっち行くから」
「そんなあ!だいくん疲れてるんだから、私が行く!!」
「いや、でも俺今‥」
「だからいいってば、私今出るし!」
私は薄い上着を羽織ってドアを開けた。
すると、目の前にはだいくんが。
「!!?」
「‥よう」
「ななななんで居るの!?」
「今あやん家の前に居るって言おうとしたんだけど」
「え?」
「話切ったのはあやだろ(笑)」
「うっそお、ごめん」
暫くふたりで笑い合ってから、だいくんを部屋に入れた。
「やっぱり落ち着くな、あやんちは」
「えー、そう?」
「そうだよ」
だいくんはいつものようにベランダに出た。
私の部屋から見える景色が好きらしい。
「ねえ、景色なんか見て楽しいの?」
「あやは楽しくねえの?」
「私は‥‥」
私は、だいくんと居れれば何だって楽しいんだけどな。
「‥私も、楽しい」
「良かった」
「でもね、だいくんが居なきゃ楽しくないかも」
「‥‥俺も」
私の部屋から見える景色の中に、
変わったものなんて何もないよ。
でも、だいくんの瞳には綺麗な街並みが映っている。
つまらない景色を、
いつもと変わらない景色を、
ふたりで綺麗に映し出そうよ。
日曜日の午後を飾る子供たちの声。
私たちの景色に色を付けた。
(もっともっと鮮やかに変えて。)